セロファンの頃 Kanna 個展作品 2008.5

中野『Kanna』にて開催した第14回イラスト作品展『セロファンの頃』の個展作品をご紹介します。

※開催期間:2008年5月11日〜2008年5月21日

セロファンの頃

赤いセロファンを丸めて、
真っ赤な部屋へ出掛けよう。
普段よりも少しだけ綺麗な服を着て、
背筋をぴんと伸ばしてみよう。
あとちょっと。
そう。
肩の力は抜いて。

セロファンの頃僕は、
滑り台のてっぺんに登って、
色とりどりの空を眺めていたんだ。

絵の具の記憶

絵の具の蓋を回したら、
あの日の記憶がこぼれ出た。
絵の具は憶えている。
僕よりもずっと。
チューブの内側の、
ほんの僅かな隙間に、
あの日の空気を吸い込んで。

赤。青。黄色。
色の記憶を辿って、
行き着く場所は郵便ポストの貯金箱の中さ!

ぷぷっ。
僕はもう、
忘れてしまったのかもしれないなぁ。

硝子の随に

「硝子の瓶を収集しているのですか?」

意識をしたことはなかった。
窓辺に並べられた硝子の瓶は、
20を越えていた。

近所にある古道具屋さんに立ち寄ると、
決まって硝子の瓶を覗き込んだ。
お気に入りを見つけると、
陽に当ててみたくなった。
薄暗い店内から救い出すように、
僕はそれをレジに差し出した。

「僕は救い出しているのかもしれませんね。」