カーニバルの憂鬱 Kanna 個展作品 2008.8

中野『Kanna』にて開催した第15回イラスト作品展『カーニバルの憂鬱』の個展作品をご紹介します。

※開催期間:2008年8月10日〜2008年8月20日

カーニバルの憂鬱

どんどんぱっぱかぱー。
どんどんぱっぱかぱー。

喧しいラッパの音。
窓硝子を震わせる大太鼓の音。
カーニバルはカーニバルに乗り遅れて、
行列の後ろの方でつまらなそうにしている。

色とりどりの衣装が混ざり合う。
絵の具のように濁ってはしまわない、
純粋な何かを閉じ込めて、
僕はそれを眺めている。

すかーとすいか

今年の夏はまだ、
すいかを食べていない。
取り立てて好きでもないすいかを、
何故だか食べたくなった。
八百屋さんに並べられたそれは、
想像していたよりも遥かに大きくって、
私は手を伸ばせずにいた。

2年前に買ったすいか模様のスカートを、
鏡の前で合わせてみる。
私はまだ、
1人ですいかを切ったこともなかったんだ。

なくなってしまう前に

もう長いこと歩いている。
何遍も腰を下ろして、
煙草を吸っている。
旅行先で手に入れたお気に入りのマッチが、
あと僅かで底をつく。

僕はずっと探している。
歩きながら、
どんどん軽くなっていく。
決して見つかることのない何かに、
少しずつ近づいている。

オムレツの街

僕がその街を訪れたのは、
蒸し暑い8月の日だった。
路地裏の喫茶店でも探そうかとうろうろしていると、
いつの間にか自分の居場所がわからなくなった。
店番のいない金物屋の角を曲がると、
不思議な光景が現れた。

黄色い建物は、
集合住宅のようだった。
風に揺れる洗濯物はどの家も赤くって、
それでも不気味ではなかった。

オムレツの街。
いつか見た夢の話さ。

シャツを選ぶ

特別なことのない日にシャツを選ぶ。
狭い部屋を行ったり来たりして、
頭を悩ませている。

ありもしないことを考えて、
わくわくして、
ずぼんを履き替えて、
靴を合わせて、
髪型を整えて、
1日が終わる。

仕方がないので、
夕食の買い物へ出掛ける。

月曜日。立ち止まる。

パン屋さんに行列が出来ていた。
僕はそこのパンを、
1度だけ食べたことがあった。
味は悪くはなかったが、
特別美味しい訳でもなかった。

お店の前を通り過ぎる。
ほとんどの商品がなくなっている。
普段ならたくさんの商品が並んでいるのはずなのに。
店員さんの顔がちらっと見えた。
何故だろう。
喜んでいるようには見えなかった。

今日は月曜日。
僕は立ち止まっていられない。